【コラム-4】ビジュアルプログラミング言語の是非

プログラミング教育について思うこと、4回目の掲載です
今回は、ビジュアルプログラミング言語の是非についてです。

ビジュアルプログラミング言語の是非

 

 Scratch(スクラッチ)は、視覚的なオブジェクトであるブロックでプログラミングするビジュアルプログラミング言語だ。

 

 Scratchを知る大人から「どのタイミングからPythonなどのテキスト言語に移行すればよいのか」という質問をよく受ける。当校にScratchでレベルの高いシミュレーションゲームなどを作る生徒がいる。中学生になった現在、大規模なゲームはテキスト言語で作っているが、今でもScratchを使い続けている。Scratchの方が作りやすい作品であればScratchを使う。重要なのはアウトプットで、テキスト言語に対するこだわりなどはない。

 

 テキスト言語を使えば、よりレベルの高いゲームなどが作れるわけではない。何かを作ろうとしたとき、Scratchより他のテキスト言語の方が適していたら、そのテキスト言語を学び始めれば良いのではないだろうか。自分の作りたいものが、Scratchで実現できるのであれば、無理をしてテキスト言語を学ばせる必要はないと思う。

 

 2022年5月現在、Scratchの登録ユーザ数は9000万人を超えており、現在も月数百人単位で増加している。全ての登録者がScratchをマスターしているわけではないが、驚くべき人数だ。近い将来、Scratchベースの言語でカスタマイズできるソフトウェアや電化製品が現れるだろう。個人的には、福祉機器などにも適用して欲しい。障がいのタイプはそれぞれ異なり、全てのユーザーにマッチした福祉機器を提供することは難しいが、販売店やユーザーがScratchで電動モーターの感度や速度などをカスタマイズできれば、選択肢は広がるはずだ。

 

 話が少しそれてしまったが、Scratchの経験自体が、将来役立つ可能性もあるのだ。しかし、Scratchの統計情報によると、アメリカ3000万人、イギリス550万人と全人口の約10%がScratchアカウントを持っているのに対して、日本では全人口の約1%の125万人しかアカウントを持っていない。

 

 日本での利用率の低さは、ビジュアルプログラミング言語に対する評価が低いからなのだろうか。一度、人気Scratcherの一人であるpraplaneさんの作品を見てほしい。

 

 全生徒を対象とした授業であれば、小中校だけでなく、高校のプログラミング授業でもScratch(スクラッチ)がベストだと私は考えている。テキスト言語による授業は、生徒たちへの負担が大きすぎるし、Scratchをうまく利用すれば、情報社会で必要な科学的な見方や考え方などは十分に学ぶことができる。